滋賀県労連の日々

滋賀県労連の事務局から発信します。

最賃の異議を出しました。

2022年8月26日

滋賀労働局長 小島裕 様

滋賀県労働組合総連合

議 長  岡本 恭治

住所 〒520-0051 滋賀県大津市梅林1丁目3-30

電話 077-521-2536

 

滋賀県最低賃金の改正決定に対する異議申し立て

 

私は最低賃金法12条の規定に基づき、以下の通り異議を申し立てます。

 

1.はじめに

労働者の労働条件の向上と国民経済の健全な発展に向け、ご尽力いただいている審議委員と局長をはじめ事務局の皆様に敬意を表します。

滋賀地方最低賃金審議会は、8月10日、今年度の滋賀県最低賃金の改定について、現行の896円を31円引き上げて927円にすると答申しました。長引くコロナ禍の厳しい経済状況・地域事情、人口動静など直面する問題を踏まえて、真摯に検討を重ねられた結果であろうとは思います。

昨年に続き答申文に入れられた要望については、この間私たちが求めていたことと大筋で一致します。コロナ禍の厳しさが背景にあるとはいえ、大きな前進だと歓迎します。ぜひ国はこの内容を受け止め力を尽くしてください。

しかしながら、この最低賃金額は、労働者・県民の願い・要求からかけ離れており、1日8時間、週40時間働いても、憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」が実現できる水準には届いていません。この間の物価高騰によって生活必需品が4%以上値上がりしているので、さらに遠ざかったと言えます。

 

2.審議の公開を

審議会事務局の労働局と審議会は結論を導いた議論過程を全面公開すべきです。審議会と専門部会などの議事要旨が出されるなど、公開は進んでいると一定評価します。しかし、内容はごく一部にとどまっており、不十分です。掲載される日程について事務局に確認したところ、当初は異議申し立てに間に合うように出されないということでした。結局異議申し立ての締切日までに専門部会の議事要旨が出されましたが、そのような状況を生みながら「異議があれば理由を示して申し出よ」というのは乱暴です。

審議会を傍聴していますが、参加する委員の方々の意見はそこではほとんど話されていません。私たち労働組合の意見が審議会に出されており、それらに何らかの形で理解が得られるよう答えるべきですが、審議会からはその努力のかけらさえ見えません。委員一人ひとりからその理由を聞きたいと強く願います。少なくとも議事要旨にどの委員がどのように発言したかを記載すべきではないでしょうか。労働者委員・使用者委員はそれぞれ組織を代表した上で、労働局に選ばれ審議に参加されていると考えます。胸を張って賛否とその理由を表明されて当然だと考えますが、労働局は採決の場面について報道に撮影するなと制限しました。一体、だれの利益を守っているのか疑問でなりません。守るのであれば最賃近傍で働かざるを得ない労働者の利益を守ってください。すべての県民、とりわけ最賃近傍で働く労働者が知り得て当然の情報です。言うまでもなく最低賃金額の決定は、労働者の生活や事業運営について大きく影響するものです。結論に至る肝心の審議を公開せず“密室”で決められては、理解のしようがありません。これは私たちが望む大幅引き上げが実現するときでも当然同様です。審議の一層の公開を強く求めます。

 

3.資料の妥当性

 昨年も指摘し、今年も事務局にも問い合わせましたが、審議会に出された資料の妥当性に疑問があります。第1回審議会で出された費目別標準生計費の数字があまりにも実態と乖離しています。額のあまりに現実的でない低さとともに、同月比であるにもかかわらず数年間の動向の中で最大5万円以上も違うなどありえません。議事要旨を見る限り、この数字を参考にして31円増を導き出したということではなさそうですが、審議会に出される資料として信用に値する妥当な質のものなのかという強い疑念を持ちます。また、問い合わせへの答えが出されないことについても、国の機関に失意を覚えます。

問い合わせに即座に応えられないような資料であるなら採用せず、是非とも私たちの全国の仲間が調査している「最低生計費調査」の数字を参考にしていただきたいと考えます。

 

4.最賃1500円、全国一律化

今年の中央最低賃金審議会の目安はABランク31円、CDランク30円と地域間格差をさらに広げようとするものでしたが、半数近い22道県が積み増しをしました。広がり続けてきた格差を埋めようという地域からの強い姿勢と言えます。

県労連加盟の組合が出した意見と重複しますが、私たちが加盟する全国組織の全労連では全国各地で最低生計費調査をおこなっています。全国どこでもおおよそ1時間当たり1500円から1600円程度が必要と試算が出ています。またこの調査の結果は、都会だから高い、地方だから低いとは必ずしもなっていません。労働人口の流出を招くため滋賀にとって通勤圏内である兵庫大阪京都との差は大きな問題です。今年の答申で兵庫とさらに差が広がりました。調査の結果からは暮らせる賃金へ全体を引き上げることと、全国一律化が求められているのは明らかです。

賃金の下限を決めることのできる数少ない制度の中で、暮らせない額を定めてしまうことは大問題です。私たちの事務所に労働相談に来られる方の中で、その年の最低賃金額ちょうどで働いている人は少なくありません。先日来られた大企業の関連企業の職場で働いている労働者もそうでした。企業の体力や労働者のあるべき生活水準に関係なく、最低賃金額が低額で定められれば、賃金はその数字に落とし込まれます。私たちの仲間が「最賃生活体験」として毎年最低賃金額で生活できるか身をもって調査しています。最低賃金額では身体的にも精神的にも厳しいということを、調査結果は明らかにしています。生活困難な額を合法にしてしまうことには大きな疑問があります。

  

5.終わりに

以上のことから滋賀地方最低賃金額を31円引き上げ、927円とするとした答申については審議の公開の不十分さ、低額にとどまったことについて大変不服です。県民が不安なくあたりまえに暮らせる水準について改めて検討し、展望を示すべきです。せめて積み増しをすすめた22道県に続く判断をすべきです。再審議を求めます。

以上